このページでは、島原市の豊かな自然と歴史が育んだ、郷土料理の魅力を紹介しています。素朴ながらも深い味わいの郷土料理は、地元の食材と伝統的な調理法が生み出す逸品です。これらの料理は、島原の食文化を彩り、訪れる人々に地域の豊かな風土を感じさせてくれます。

島原の名物「手延べそうめん」

かつて島原は島原の乱ですっかり荒れ果てましたが、農村復興のため小豆島から移住した人々の中にいた、手延べそうめん造りの名人が藩主の保護をうけ、その技法を島原地方に伝えられたとされています。 

島原地方の豊かな農地に育まれた良質の小麦粉と、名水百選の一つに選定された湧水、おだやかな気候風土に恵まれ、独特のコシと風味のあるそうめんが作られています。

手延べそうめんの原料は、小麦、塩、綿実油、水です。熟成の時間も必要となるため、一回の製造に1~2日かかります。
厳選された小麦粉を用いるのはもちろんですが、粉によってそれぞれの性質も違うため、粉を見極め、その性質を最大限に生かしながら最高の状態のそうめんを仕上げていくのが、島原手延べそうめんの伝統の技術です。

島原手延べそうめんの特徴は、なんといってもその”コシ”の強さです。冷たく冷やして食べるのはもちろん、煮込んでもなかなか煮崩れしません。
ぜひ一度、その味を堪能してみてはいかがでしょうか。

島原の代表的な郷土料理「具雑煮」

この具雑煮は寛永14年(1637年)の島原の乱の時、一揆軍の総大将であった天草四郎が、約37,000人の信徒たちと籠城した際、農民たちに餅を兵糧として蓄えさせ、山や海からいろいろな材料を集めて雑煮を炊き、栄養をとりながら約3ヶ月も戦ったといわれています。

島原の雑煮は、大鍋に野菜や魚などを大量に入れて煮込むのが特徴です。
また、ダシの取り方は各家庭で違いますが、カツオだし、いりこ、かしわ、あご、こんぶなどがよく使われています。

料理自体はきわめて単純なものですが、前述のように材料には、ゴボウ、レンコン、シロナ、白菜、椎茸、かしわ(鶏肉)、蒲鉾、焼アナゴ、卵焼き、春菊、凍り豆腐、そして”丸餅”など十数種類の具を用いており、煮汁がうまく調和し、うまみを引き出しています。
まさに海の幸、山の幸の集大成です。 平成19年(2007)には、農林水産省の「農山漁村の鄕土料理百選」に卓袱(しっぽく)料理と並び選定されています。

風味、かおりともに絶品「ガンバ(とらふぐ)」

島原地方の方言では、河豚(ふぐ)のことを総称して「 ガンバ」と呼びます。

ふぐは猛毒をもつため、江戸時代、藩主がフグ食の禁令を出していましたが、それでも危険をかえりみず、おいしいフグを食べる人が後を絶たなかった多かったようです。そうしたことから、「 棺(ガン)ば(を)そばに用意してでも食べたい 」という意味で「 がんば 」と呼ぶようになったともいわれています。

有明海には冬、五島灘やその周辺にいたトラフグが3月から5月にかけて産卵にやってきます。島原湾は春がフグ漁の最盛期で、そのトラフグを使ったものが「ガンバ料理」です。とても美味しいため、養殖トラフグや有明海産ナシフグも登場するようになってきました。

料理

郷土料理の一つに「 がねだき 」があります。

まず、「がんば」をぶつ切りし、火にかけ、から炒りをして、水気を切ります。醤油、酒またはみりんで味をつけ、(砂糖は使用しない)梅干しとニンニクの葉を加え煮汁がなくなるまで煮込みます。風味、かおりとも絶品といえ、島原独特のものです。

「がねだき」は、松平家の最後のお殿様である松平忠和公もお召し上がりになったと吉田家『記録』※1に残されているため、古くから親しまれていたことがわかります。(※1・現在の南島原市有家町にある吉田酒造店)

他にがんばの身を多少厚めにそぎ切りにして薄塩をしたあと、熱湯にさっとくぐらせ冷水にとり、梅干しの身を醤油、酒、酢で作ったタレともみじおろしなどの薬味と一緒にいただく「 湯引き 」も珍味として食されています。

島原の海の幸を代表する「有明がね」

島原では、蟹(かに)のことを「がね」と呼び、有明海で獲れるワタリガニのことです。
島原半島では古くからこの名前で親しまれています。旬の時期は夏から秋にかけてですが、一年中おいしくたべられ観光客にも大人気です。

有明がねの調理方法はとってもシンプルで、たっぷりの湯を沸かし茹でるだけで、脚の付け根から先端までギッシリ詰まったプリプリとした白身が堪能でき、一口一口が贅沢な味わいです。
有明がねの食べ方として、欠かせないのが「ツザケ」。甲羅に日本酒の熱燗を注ぎ込んで、一杯目はそのまま、二杯目からは柿色がかった「セキ」を溶かしながら味わうのがおすすめです。
タラバガニや毛ガニに比べても遜色ない美味しさだと、島原の人々は太鼓判を押します。
ぜひ一度、その美味しさを堪能してみてください。

自然の恵み”湧水”で作るお団子「かんざらし」

かんざらしは、白玉を特製の蜜につけて食べるお菓子です。

島原にはたくさんの湧水スポットがあり、通称「水の都」とも言われています。

島原で湧き上がる湧水を使って粉を練り上げることで、弾力がありながらしっとり感が残っているなんとも言えない食感を表現できるのです。粉にもこだわりがあり、白玉粉をベースにしてお団子がもっとも美味しく出来上がるようにブレンドしています。島原では”かんざらし粉”ともいいます。

一見、どの地域でも作ることができそうなお菓子ですが、島原だからこそ出せる味や食感、そして、おもてなし郷土菓子となった歴史があります。

”特製の蜜”

島原に来てかんざらしを食べたらきっと驚かれると思います。なぜなら、かんざらしの蜜はお店によって”味が違う”からです。お団子自体に味が付いている訳ではないため、この蜜が「かんざらし」の味の決めてになります。「しつこくなくスッと抜ける甘さのある蜜」や「濃厚な色と味でお砂糖本来の甘さミルキーさが際立つ蜜」など。十食十通りの蜜の味が味わえます。

”かんざらし”の歴史

かつての税金である年貢に用いられるお米は、庶民がたやすく口にできるものではなく、年貢として収めることができないくず米しか食べることができませんでした。

お米はそのまま長期保存をするとムシが食べてしまうため、くず米を石臼(いしうす)ですりつぶし、米粉にして保存をしていました。そして、夏になると湧水でお団子を作り、湧水の中で腐らないように保存をしていました。

それに加え、島原(口之津や加津佐)ではかつて、”砂糖”の生産が盛んで豊富にありました。それで蜜を作り、夏のおもてなしとして”かんざらし”が振舞われていたと言われています。文献などには”武士”たちが食べていた記録も残っています。また、砂糖作りが盛んだったことから島原の特産品・お土産品には甘いお菓子がとても多くあります。

”かんざらし”の手作り体験

島原の観光スポットの一つである”しまばら湧水館(Koiカフェゆうすい館)”では、かんざらしの手作り体験ができます。体験をご希望のお客様は完全予約制となりますので、ご予約をお願いします。

素朴な味わいの郷土料理「六兵衛」

ろくべえは、島原市の郷土料理で、さつまいもを原料とした麺料理です。

その歴史は古く、1792年の「島原大変」の際に島原半島は食糧危機に見舞われ、さつまいもを主食とするようになりました。当時、深江村(現在の南島原市深江町)の六兵衛という人が、さつまいもを粉末にして山芋を入れ、熱湯でこねてうどん状にしたものを作ったのが始まりだとされています。

原料のサツマイモの粉に、つなぎに粘性のあるヤマイモを使用しています。見た目は太麺のソバのようですが、甘味があるのが特徴です。
ダシはすまし汁で、ネギや七味唐辛子をかけると美味しさが増します。 耐乏食だった過去もありますが、現代風にアレンジされ、素朴な味わいの郷愁を誘う郷土料理です。

ろくべえは、島原市内の飲食店でも提供されています。また、家庭でも作りやすい料理なので、ぜひ一度、その味を試してみてください。

つい手が出てしまう素朴な郷土料理「いぎりす」

島原南部の有明海に面した地域で、6月の大潮の際、潮が引いた沖に出ると、岩についた「いぎす」という濃いえんじ色の海草がとれます。足から腰まで水に浸かり、金属製の「ごうかき」で石から簡単に取り外せます。いぎすはてんぐさよりも長く、触るとしゃりしゃりと心地よい感触があります。

島原の乱後、四国から移住した人々の影響で今治周辺でいぎす豆腐が生まれました。干しいぎすをさらすと、一斤が約40匁に減ります。うるち米の新しい米ぬか5合を布袋に入れ、水2升でもんで、一番ぬか汁でいぎす40匁を洗います。水を絞り、二番ぬか汁2升を加え、火にかけて練ります。ぬか汁は少しずつ加えながら、いぎすはうるちぬか汁で30分ほど煮ると溶けてきます。

にんじん、きくらげ、しいたけ、魚を小さく切り、砂糖醤油で煮ておく。炒った落花生を包んで叩き、小さく切った豆腐も用意します。いぎすが溶けてとろみが出たら、具と煮汁を加えて味を整え、10分ほど練ってねぎを散らし、流し箱に流し込んで固めます。中身の美味しさとのどごしが魅力の郷土料理です。

具なしの白いぎりすは仏事に使われ、細く切ってごま醤油や白あえで食べます。また、藻いぎす(えごのり)は藻につく赤い花を取り、味噌を水で溶いた汁で炊くと、こりこりとした美味しいいぎりすができます。

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